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ぶふぉっ! 「きゃあっ? もう、ダメでしょ、雄一〜」 ぷりぷりと怒るのは、俺の前に座っていた美咲だ。 旅行2日目の朝食の時間。俺たち4人はいつものように談笑しながら食事を取っていた のだけど、美咲が発した言葉を聞いた俺は、思わず吹き出してしまっ…
珍しく、スッキリとした朝だった。 着替えてから居間に置いてあるテレビのスイッチを入れて天気予報を見ると、この一週 間は日本全国どこもかしこも太陽のマークでいっぱいだった。 これなら心配ないな。 せっかくの旅行だ。雨も思い出にはなるだろうが、晴…
久しぶりのオフ、というのも変だけど、部活のない日を平穏に過ごした。 美咲に起こされて、美咲に食べさせられて、美咲に勉強を邪魔されて、美咲に昼寝を邪 魔されて、美咲と遊んで、美咲と弘明とグッさんと遊びに行って、帰ってきた。 そんな平穏な一日だっ…
今日の練習で、夏休み前半の部活は終了となった。部員に話を聞いてみたところ、やは りお盆に用事があるやつが大半で、その日程も来週のほとんどの日に分散していたので、 いっその事、丸々一週間休みにすることに決めていた。 「みんなお疲れ様。それじゃ、…
じりじりと照りつける日差しを恨めしく思いつつ、今日も図書館にやってきていた。 「あー、この図書館がなかったら、きっと夏休みの宿題は終わってなかったなと思うね、 俺は」 「あ、わたしもわたしも♪ 冷房の効きすぎは身体によくないけど、この図書館はち…
夏真っ盛りの八月のある日。俺、朝霧達哉はいつものように月人居住区に向かっていた。 今年は梅雨が長引いたので例年よりは涼しい日が続いていたが、先日待ちに待っていた 梅雨明け宣言が出されてからは、連日のように真夏日となっていて、毎日のように今年…
梅雨明け宣言が出た次の日。さっそく雨が降った。 「まったく、天気予報なんてあてにならないなあ」 と、最初はそれでも気楽な気分だったが、部活が終わる頃にはものすごい勢いになって いた。 「こりゃすごいな……。傘なんて役に立ちそうにないけど、どうす…
八月になって、数日が過ぎた。夏休みに入ってから毎日部活に遊びに大忙しだったのが 響いたのか、今日はとてつもなく眠い。 なんとか部活を終えた後は、昼飯を食べる前にひと眠りしようと横になった。 「雄一〜、お昼だよ?」 「後にしてくれ……」 「そんなこ…
先週まで、正確には昨日までどちらかと言えば雨寄りの天気だったのだが、今日はそん なことあったっけ、と思えるぐらいの晴天だった。 ちょっと寝不足ながらも、きちんと午前中の部活はこなした。 昼飯を食べて少し昼寝したおかげで、体調は完全回復。 「若…
八月の最初の月曜の午後。朝霧達哉と朝霧麻衣は、リビングでぐったりしていた。 「暑いね〜、お兄ちゃん」 「暑いな、麻衣」 「八月だもんね」 「八月だもんな」 「オーガストだもんね」 「オーガストだもんな」 「麻衣ちゃん、すごく可愛いよね」 「……ぐー…
ニュースでは、今年の梅雨明け宣言は出ないかもしれませんと言われているが、たとえ 梅雨が終わらなくても、夏休みが終わらないわけじゃない。最終日に地獄を見ないために も、計画的に宿題をこなしておく必要があった。 「雄一〜、夏休みなんだから遊びに行…
「いよいよ夏本番だね、雄一!」 朝から元気200%の美咲が、俺を叩き起こした。 「本番も練習もないだろ……。美咲の中ではいつから本番なんだ」 眠い目をこすりながら言うと、 「八月から♪」 と、満開の笑顔。これは、もう何を言ってもダメだと、俺の経験…
「あ、美咲ちゃん、雄一君〜こっちこっち」 「ごめんね、香奈ちゃん。ちょっと遅れちゃった。……弘明くんに襲われなかった?」 「え……、そ、そんなわけないじゃない」 「と、グッさんは言ってるが、お前に脅されている可能性もあるよな。さあ、真相はどう な…
夏休みも十日を過ぎて、いよいよ夏も本腰を入れてきた。具体的には、晴れの日が多く なってきており、セミの数も増えているんじゃないかという感じの合唱が、エンドレスで 聞こえている。 この夏一番のいい天気だが、意外にも風があって過ごしやすい。 午前…
今日はとっても気持ちよく目が覚めたので、雄一にも同じ気持ちを味わってもらおうと 思いました。 雄一の家に行くと、ちょうど雄一のお母さんがお仕事に出かけるところでした。 「あら、おはよう、美咲ちゃん。悪いけど、雄一起こしてくれるかな?」 「おは…
今日もじーじーとセミの声が暑さを増している。と思ったら急に雨が降ってきて、じめ じめと暑くなってくる。もしかしたら、今年の夏はずっとこんな調子なんだろうか。 運動部でも俺たちバスケット部は基本的に体育館なので、雨が降ろうが雪が降ろうが平 気だ…
ぴんぽーん、という呼び鈴の音が聞こえたので、朝っぱらから宅配便でも届いたのかと 思ってドアを開けたら、そこにいたのは幼なじみの姉妹だった。 「おはよう、雄一♪」 「おはよう、雄くん」 「おはよう、ふたりとも。えと、今日はふたり揃ってどうしたんで…
さわやかな日曜、ということを歌っている歌もあるけど、今日さわやかだったのは午前 中だけだった。 俺と美咲、それから弘明とグッさんの4人で駅前で待ち合わせて合流したところで、突 然雨が降ってきた。 「うわ、いきなり降ってきたねえ〜」 「そうだなあ…
土曜日の朝。今日は部活が休みなので、実に一週間ぶりに目覚ましのない、自然な目覚 めを得られた気がする。 うーん、やっぱり自然が一番だよな。規則正しい生活も大事だとは思うが、日の出と共 に起きて、日の入りしたら就寝という生活も悪くないかもな。 ……
「よおし、みんなお疲れ〜。今日も密度の濃い練習ができました。明日と明後日は土日だ から休みなんで、また来週からがんばろう。片付けは俺がやっておくから、回復したヤツ から帰ってくれ。それじゃ、解散!」 返事はなく、ぜいぜいはあはあという息遣いだ…
昨日はあんなにもしっかり曇っていたのに、今日は太陽のターンとでも言いたいのか、 朝から元気に太陽は陽射しを降りそそいでいた。 「おっはよ、雄一。今日もがんばろうね♪」 そして、美咲も変わらず元気だった。まあ、美咲から元気を取り除いたら何も残ら…
夏休み3日目。実質は先週の土曜日から始まっているわけだが、あくまでもカレンダー にこだわりたいところである。だって、土曜には土曜の、日曜には日曜の楽しみ方がある だろう? さすがに今日は俺も美咲も普通に起きて、学校に行った。セミの鳴き声がうる…
また美咲にあんな起こし方をされるのはかなわないので、予定よりも35分前に目覚ま しをセットして眠りについた。 うまくいけば、美咲をビックリさせられるな、ふふふ。と思いながら目を閉じたのだが。 翌朝、つまり今だ。俺は目覚ましの音で目を覚ますこと…
太陽の自己主張が、夏休みに入ったとたんに激しくなったと思えるような日差しが、朝 からさんさんと降りそそいでいる。 だが、文明の象徴とも言えるエアコンが静かに稼動している笹塚雄一の部屋は、太陽よ りも涼しさの主張のほうが勝っており、部屋の主であ…
六月の梅雨空は月が変わるのと同じくして消え去り、七月に突入した途端に、気の早い セミの鳴き声がBGMとして聞こえてくるようになった。 暑さをパワーアップさせてくれるセミの鳴き声だが、七月の初旬ではまだ効果も薄く、 むしろ気分転換になるようだ。 「…
「今日はポニーテールだねっ、雄一♪」 朝のあいさつもまだなのに、いきなり意味不明のことを言われたが、相手が美咲なので 何も考えずに「そうだな」と言った。 「うわ、雄一すごいね。今日が『ポニーテールの日』だって知ってたんだ」 オーバーなリアクショ…
窓から見える外の景色は、雨色。それも滝のような土砂降りで、朝からものすごい勢い で止みそうな気配は少しも見えない。 「今日は……お客さん来ないかもね」 人気の無い店内を見回して、軽く溜息をついた。 毎週、決まった曜日は家の手伝いと決めているので…
六月に入ってから、ようやく梅雨らしい気候になってきた。夕べは結構な強さの大雨で、 窓に叩きつけるように降る雨が滝のようだった。 いつもよりも早めに眠った孝平は、いつもよりも早く目が覚めた。 窓から差し込むのはお日さまの光。昨夜の雨が夢だったか…
「春美、そろそろ3卓のお客様のデザート……」 そろそろ頃合かと、優佳が厨房にやってくると、 「おっし、できた! マリー、仕上げ頼む」 「わかりました。ここをこうして……できましたっ。優佳さん、お願いします」 流れるような作業で、コース料理のラストを…
窓の外は梅雨の時期なのにも関わらず、夏を先取りしたかのような晴天だった。 監督生室は生徒会の仕事でいつも忙しく、無駄話をしている暇もないほどだ。 「暑いわね……」 珍しい瑛里華のつぶやきを聞いた孝平は、こっそりと白を呼んで、耳打ちした。 「わか…