(ぷちSS)「18日目 計画はお早めに」(舞阪 美咲)

 じりじりと照りつける日差しを恨めしく思いつつ、今日も図書館にやってきていた。
「あー、この図書館がなかったら、きっと夏休みの宿題は終わってなかったなと思うね、
俺は」
「あ、わたしもわたしも♪ 冷房の効きすぎは身体によくないけど、この図書館はちょ
うどいい感じだから、宿題が捗るよ。ね、香奈ちゃん」
「そうだよね。宿題もどうせひとりでやるよりは、みんなとやったほうが楽しいもの。
弘明君もそう思わない?」
「そうだな、仲間はずれはよくないな、うん」
 しみじみと弘明が頷いた。
「どうかしたのか、弘明。なんだか随分うれしそうなんだけど」
「いや、親友っていいよなって思っていただけだ、ハハハ」
 よくわからん。
「そう言えば、弘明くんしばらく見なかったけど、どうしてたの?」
「よっくぞ聞いてくれた、舞阪! グッさんも雄一も聞いてくれよ」
 待ってましたとばかりに、弘明が語りだした。


 なんでも、急に人手が足りなくなったらしく、親戚の旅館の手伝いに一週間借り出さ
れていたらしい。それも無給で。
「さすがに三食と寝床は提供してもらえたんだが、無償奉仕の辛さはしばらく味わいた
くないね」
 うーん、なんとも不幸な話だ。だが、こいつのことだから、イヤイヤながらもソツな
くこなしたんだろうな。
「そりゃ、当たり前だ。自分の不満は自分に溜め込んでりゃいいんだ。他のヤツに気づ
かれるようじゃ、人としてまだまだだっての」
「弘明くん、カッコイイ!」
「すごいな〜、さすがは弘明君だね」
 女性陣の株が高騰した。
「ワッハッハ! いやいやなんのなんの。で、話はこれからだ。その親戚の旅館なんだ
が、みんなで遊びに行かないか。つーか、来てくれ!」
 ……は?
「実はな、団体客の予定が一週間早まっちまったせいで忙しくなってたわけで、明日か
らの一週間はまだ空きがたくさんあるらしいんだ。今からじゃあ大勢のお客は見込めな
いし、かと言って部屋を空けておくのももったいないしさ。格安にしとくから、みんな
で来てくれると助かるんだが」
 頭を下げる弘明。
「そうだなあ。来週一週間は、お盆休みってことで部活は休みにしてるけど、美咲は何
か用事あるか?」
「雄一と遊ぶ用事しかないけど♪」
 それは用事じゃない。
「グッさんは?」
「私は、園芸部のお仕事があるんだけど、先週みんなの分もやったから、お願いしたら
変わってくれると思うの」
「よし、俺からもお願いする! なんだったら、来週から俺も園芸部の手伝いをする!!」
 弘明がきっぱりと言い切った。
「え、それはさすがに悪いよ〜」
「まあ、いいんじゃないか。俺も部活の合間なら手伝えるし、せっかくだからみんなで
旅行も行きたいしさ」
 俺も後押しすると、やっとグッさんも頷いてくれた。
「よっし! みんなサンキュー!! それじゃ、早速計画を練るか」


「わーい♪ なんだかすっごく楽しくなってきたよ〜、えっへへ☆」


 その後、俺たちは宿題そっちのけで旅行の計画を立てるのに全力を費やした。