(ぷちSS)「ひなまつり」(FORTUNE ARTERIAL)(悠木 かなで&陽菜)

業務報告〜。
SS「ひなまつり」を追加しました。
FORTUNE ARTERIAL」のヒロイン、悠木 かなで&陽菜のSSです。
上のリンクからでも下のリンクからでも、お好きなほうからどうぞです〜。
上はいつものhtmlで、下ははてな仕様になります。


「ひなまつり」(FORTUNE ARTERIAL)(悠木 かなで&陽菜)


 まわりが騒がしくて目が覚めると、かなでさんが仁王立ちしていた。
「あっ、やっと起きたね。こーへーがもう少し起きるのが遅かったら、
これをプレゼントしてあげようと思ってたのに」
 かなでさんは、手に持ったそれをひらひらさせる。
 起きてよかった、と、孝平は溜息をつく。
「で、どうして俺の部屋にいるんですか、かなでさん」
「わたしだけじゃないよ?」
 と言うので、よく見てみると陽菜が何やらテーブルの準備をしていた。
「おはよう、孝平くん」
 にっこり笑う陽菜。
「おはよう、陽菜」
 挨拶を返す俺。
「あー、なんかひいきされてるー。いーないーな。わたしもこーへーに
挨拶してほしいよ」
「……おはようございます、かなでさん」
 俺がそう言うと、かなでさんはにぱぁっと笑って俺の頭をぐりぐり撫でた。


「今日は『ひなまつり』をするよ〜」
 かなでさんの言うことは大抵突拍子もないことが多いが、今日も
どうやらそうらしい。
「えーっと、今日は3月3日ではありませんよね?」
「うん、そーだよ」
「じゃあ、どうしてですか」
「わたしがやると決めたから」
 それが理由なのか。つーか、自信たっぷりに言い切られたし。
「ごめんね、孝平くん。お姉ちゃんは言い出したら止まらないから」
 陽菜が俺にだけ聞こえるように小声で話す。
「別に陽菜が謝ることじゃないだろ。まあ、しかたないか」
 テーブルには、陽菜が用意した桃の花、雛あられ、菱餅、白酒といった
雛祭りらしい物でいっぱいだ。
「って、白酒はいいんですか?」
「だいじょうぶ。被告には黙秘する権利が認められているんだから」
 それでいいのか、寮長。つか、誰が被告になるんだか。
「ほんとはね、白ちゃんにお酌してもらって、これがほんとの白酒だね♪
 と言いたかったんだけど、残念ながら断られちゃって」
「ローレル・リングのお仕事があるんだって」
 陽菜がかなでさんの説明をフォローしてくれた。


「それじゃあ、まずは乾杯しよう。かんぱーい!」
「「かんぱーい」」
 いきなり乾杯させられ、しかたなくお猪口の白酒を飲み干す。
「ぷはーっ。五臓六腑に質店抜刀だねぇ〜」
 かなでさんが顔を赤くしている。って、早いな、おい。
「お姉ちゃん、それを言うなら七転八倒でしょう?」
 同じく陽菜も顔を桃色に染めている。こっちもか。
「いや、五臓六腑に染み渡る、じゃないのか?」
 どこからつっこんでいいんだかわからないが、とりあえず訂正しておく。
「細かいことはいいっこなし! それじゃあ、ひなまつりのメインイベントを
はじめたいと思いまーっす」
 と言い放つと、かなでさんは陽菜のたわわに実ったふくらみを鷲掴みにした。
「きゃあっ? お、お姉ちゃんいきなり何するの?」
「ふふふ、よいではないかよいではないか」
 悪代官みたいなことを言いながら、かなでさんは両手をわきわきと動かす。
「ちょ、だっ、だめだってば……孝平くん、も、見てるのにぃ〜、ぅぁんっ」
 陽菜は抵抗してみせるが、かなでさんはたくみに身体を動かしながら決して
手を離そうとはしない。
「はい、そこまで」
 俺はかなでさんを捕まえると、陽菜から引き剥がした。
「こーへーのいけずー」
「何とでも言ってください。陽菜、大丈夫か」
 陽菜ははぁはぁと息を荒げながら、胸元を押さえている。
「う……うん、ありがとう」
 少し潤んだ目で俺を見つめる陽菜。……少し、どきりとした。


「それで、どうしてあれがメインイベントになるんですか」
 かなでさんを問い詰める俺。
「だって、ひなまつりは女の子の成長を祈る行事なんだもん。だからお姉ちゃんと
してはひなちゃんの成長を確かめようとしただけだもん」
 そんな可愛らしい言い方してもダメです。
「あはは……、まあ、お姉ちゃんのことだから、そんなことだと思ったけど」
 苦笑する陽菜。確かにかなでさんならありえる、というか、なんでも
ありえそうだが。
「それでね、こーへー。ひなちゃんはなんと! 去年よりもおっきく……」
「おおお姉ちゃん! 何言おうとしてるのっ」
 あわてて、かなでの口を押さえる陽菜。
 ほんと、このふたりといると退屈しないな。
 随分と騒々しい『ひなまつり』だけど、こういうのも悪くない。
 そんなことを思いながら、俺は目の前の光景を肴に、白酒を飲むのだった。


 おわり