(ぷちSS)「がんばれ、瑞穂ちゃん!」 (やるきばこ)

第一話

 ずーーーん……。
「うう、また負けちゃった……」
 僕はショックでテーブルに突っ伏した。
 恵泉女学院に転入してエルダーに選出された頃の、雨がよく降る
季節のことだった。
 僕、宮小路瑞穂は同じ寮に住んでいる周防院奏ちゃんに、夕食後に
リバーシ」をやりませんかと誘われた。
 いつもは寮に住んでいる全員(幼なじみの御門まりや、一年生の
上岡由佳里ちゃん、それに奏ちゃんと僕の合計4人だ)が
揃って夕食を食べるんだけど、今日は陸上部のミーティングが
あるということで、陸上部のまりやと由佳里ちゃんはまだ
帰ってきていない。
 僕と奏ちゃんはふたりだけで夕食を食べた後、まりやたちを
待っている間にゲームでもしようということになったのだった。


「あ、あのお姉さま…ご、ごめんなさいなのです」
 奏ちゃんが申し訳無さそうに謝ってくる。
「い、いいのよ奏ちゃん。奏ちゃんが悪いわけではないから、
気にしなくてもいいのよ?」
「で、でも。お姉さまのそんなお姿を見ていると、奏、奏ぁ…」
 奏ちゃんは目にうっすらと涙を浮かべている。
 ま、まいったなあ。
 ここはなんとかして奏ちゃんを元気付けないと。
「でも奏ちゃんがこんなにオセロが強いなんて思わなかったわ。
4回ぐらいやったかしら? その4回ともほとんど完敗だったん
ですもの。すごいわ」
「そんなことありませんですよ〜。奏よりも、由佳里ちゃんや
まりやお姉さまのほうがお強いんですから」
「え、そ、そうなの?」
 それは初耳だよ…。
「はい。お姉さまがいらっしゃるまでに、何度かまりやお姉さまや
由佳里ちゃんと「リバーシ」で対戦したことはありますが、奏は
いつも負けてましたから…」
 ということは、もしかしてこの寮の中では僕が1番弱いってことに
なるんだろうか。とほほ……。
 「リバーシ」の弱いエルダーってのも、どうにも様にならない
ような気がする……よし。
「奏ちゃん。もう1戦、お願いしてもいいかしら」
「は、はい。奏は構いませんけれども」
 なんとなく、このままではまりやにバカにされてしまうような
気がしていた。何よりも、エルダーとしてちょっと恥ずかしい。
 僕はどういうわけだか、やるきに満ち溢れていた。
「では、いいかしら奏ちゃん」
「はい、お姉さま♪」
 ぱちん、と盤上を打つ音が夕食後の食堂に響くのだった……。


第一話、おわり


あとがき


はい〜、あまりにも「リバーシ」の奏ちゃんが強くて勝てないので、
ぷちSSが錬成されました(笑)。
第一話とか書いてますが、奏ちゃんに勝ったら次の話を書く予定です。
しかしほんとに強いよなあ。初戦の相手にしては強すぎなのでは
ないでしょうか……。つか、勝てるのかな?